〜snow girl/6〜
2003年7月25日そして一週間後の、カードを見ながら歩く尾上陽彦の“時”に戻る。
陽彦は回想を終えると再びブレザーの裏ポケットにカードを戻す。
あの一件で、ニュースにでもなるかと思っていたがなんの変化も無く日々は過ぎた。・・まあ少しではあるが変わったといえば変わった・・というくらいだ。
一変した!
なんてことはない。慣れてしまえば、“非”現実なんてこんなモノなのかなあ。なんて思った。
ただ
新しく変わった通学路は、いつのまにか修復され、境界線のように新しく塗ってある部分はうっすら色が違う。
そんなことを考えながら、高1の春を噛み締めていた。それはやんわりとした、非現実が具現化した強烈な感覚を止めるための無意識の“抵抗”だった。
「おはよう」
突然、後ろで声がした。少し驚いて後ろを見る。
長い黒髪で、後ろで髪結いをしている陽彦よりも少し背丈が高い少女だった。ブレザー調のスカート、陽彦と同じ学校、女生徒の学生服だ。
「おはよう」
陽彦は、少し?引いた?感じであいさつをした。
「今日は暑いね。弓道の朝練で、部活道具が重いよ」
少女は垢抜けた笑顔と言葉で返した。少女は
、陽彦の倍の汗を学生服に流していた。少しではあるが、豊な彼女の胸・・透けてブラがうっすら見えている。
それに気づいて、陽彦は顔を背けた。恥ずかしさが多少残るが、話をしようと男の性をなんとか抑制する。
「あ、朝練いつもだよね?まだ春なのに初夏みたいに暑いし」
陽彦は少し照れながら、少女と話す。
彼女の名は、雹花鈴[ひょうかりん]唯一、同級生で疎開しなかった友人である。彼女は今一人暮らしをして、バイトに励んでいた。家族はおらず、ある組織に在籍している。
それは
“ALTER”
還るという意味。
続く
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