少年はヘタレこみ、うわずった声で火傷を負った右腕を胸に押し当てていた。

 「ぐ・・痛・・・」

 少年の横、通学道路のコンクリートを抉った場所はクレーターのようになっていた。その場所にはまだ、甲虫に似た姿の物体が冷気とともにバイザーから煙を吐いていた。

 ≪うう・・はあ、はあ・・苦しい≫

 少年には聞こえていない、バイザーの中から少女のような声がしていた。

 ≪杉田だ。情報状況報告≫

 別の声が、その物体からした。

 ≪報・・告。敵NS・・[CHEZRGUN(以下C)]と遭・・遇
 
 深呼吸

 ・・これに対処したものの、新型の鈍重な動き並びにインター・フェイス、OSの作動限界により機能不全を起こしました。[パラベルム]並びに[特殊冷却剤 ニュームナライザー]を使用したにも係わらず暴走を食い止められませんでした・・・≫

 吐血
 
 ≪・・そうか。太陽ヒナタ、現時刻を持ってお前を回収する。BJ[獅子]を破棄、自爆させる。お前は、ポータルを展開したのち即急に転進し・・≫

 ≪あの・・≫

 ≪?。なんだ≫

 ≪私のポータブル・アナゴリズムがアドバンスド・デバイスを確認しました・・。今、先ほど私を助けようとした民間人のようです・・≫

 マイク越しの男の声が、一瞬止まる。

 ≪・・それはバグ、不全時における不確定情報ではないな?≫

 二度目の深呼吸、男の声は淡々としていた。

 ≪ハイ・・≫

 ≪そうか・・・。その民間人は、どうしたたんだ?≫

 ゆっくりと、少女の声の主が開いたバイザー・ハッチから姿を現した。

 白い透き通るような肌と、ショートの白髪。眼は黒系の灰色をしていて華奢な体つきをしている。右耳に、手をあてがいイヤーマイクに集中していた。
 
 服装はフィットしたゴム製のシリコンのBJを纏っていた。
 
 絶対零度の冷気を帯びながら、日光にその体を這わせる・・

 「倒れています。ハッチを開けたときの圧縮した冷気で凍傷火傷を負ったようです・・致命傷にはなっておらず生きていると思われます」

 ≪そうか・・。周りには、あ〜民間人はいるか?≫

 辺りを見回す少女。

 「いえ・・避難した模様です。予備報告、NS[C]は、情報をバック・アップ中なのかフリーズ状態のようです」

 ≪・・・。おそらく、落下時のバグだろう。目的を変更、アドバンスド・デバイスの可能性を持った民間人を救出、ポータルで一時撤退だ≫

 「了解しました。ポータルの、マーカー開きます」


               続く

 


 

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